「そろそろ人を雇いたい」
「初めて従業員を採用することになった」
会社が成長していく中で、従業員の雇用は大きな一歩です。
ただし、人を雇うということは、単に給与を支払うだけではありません。労働条件の決定、雇用契約、社会保険・労働保険の手続き、勤怠管理、給与計算、法定帳簿の整備、時間外・休日労働に関する手続きなど、会社として整えておくべきことが一気に増えます。
採用後に慌てて対応すると、手続き漏れや労務トラブルにつながることもあります。だからこそ、従業員を雇う前の段階で、基本の仕組みを整えておくことが大切です。
ポイント
雇用契約、給与、勤怠管理、保険手続き、法定4帳簿、36協定は、採用前にまとめて確認しておくと安心です。
1. 労働条件を明確にしておく
まず大切なのは、採用する人にどのような条件で働いてもらうのかを明確にすることです。
たとえば、以下のような内容です。
- 雇用形態
- 契約期間
- 就業場所
- 業務内容
- 始業・終業時刻
- 休日・休暇
- 給与額
- 賞与や昇給の有無
- 退職に関すること
これらを曖昧にしたまま採用してしまうと、入社後に「聞いていた話と違う」「どこまでが仕事なのかわからない」といったトラブルにつながる可能性があります。
特に、給与、勤務時間、休日、業務内容は、採用前にしっかり整理しておきたいポイントです。
2. 労働条件通知書・雇用契約書を準備する
従業員を雇う際には、会社から労働条件を明示する必要があります。そのために準備しておきたいのが、労働条件通知書や雇用契約書です。
口頭だけで条件を伝えてしまうと、後から認識のズレが起きやすくなります。
「給与はいくらか」
「残業はあるのか」
「試用期間はどうなるのか」
「契約更新はあるのか」
こうした内容を文書で残しておくことで、会社と従業員の双方にとって安心材料になります。
また、法改正により、労働条件通知書に記載すべき項目が追加されているため、昔使っていたひな形をそのまま使うのではなく、現在のルールに合った内容になっているか確認することも重要です。
3. 労働保険・社会保険の加入手続きを確認する
従業員を雇うと、労災保険・雇用保険・社会保険の手続きが必要になる場合があります。
労災保険は、原則として従業員を1人でも雇う場合に関係してきます。雇用保険は、勤務時間や雇用見込み期間などの要件に該当する場合に加入手続きが必要です。
また、法人の場合は、代表者1人の会社であっても社会保険の適用対象となるケースがあります。従業員を雇うタイミングで、健康保険・厚生年金保険の加入手続きが必要になることもあります。
「パートだから不要」
「短時間だから関係ない」
と自己判断してしまうと、後から手続き漏れが判明することがあります。
採用予定の働き方に応じて、どの保険に加入する必要があるのか、事前に確認しておきましょう。
具体的な手続きや提出期限については、「はじめての雇用で必要になる社会保険・労働保険の手続き」で詳しく解説しています。
4. 勤怠管理と給与計算の流れを決めておく
従業員を雇うと、毎月の勤怠管理と給与計算が必要になります。
出勤日、労働時間、休憩時間、残業時間、有給休暇などを正しく管理する仕組みが必要です。
特に注意したいのは、以下のような点です。
- 労働時間をどのように記録するか
- 残業代の計算方法
- 遅刻・早退・欠勤の扱い
- 有給休暇の管理
- 給与の締日と支払日
- 交通費や手当の扱い
最初は従業員が1人でも、勤怠管理や給与計算のルールが曖昧だと、人数が増えたときに対応が難しくなります。
小さな会社ほど、最初にシンプルで続けやすい仕組みを作っておくことが大切です。
5. 就業ルールを整えておく
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合に作成・届出義務があります。
ただし、10人未満の会社であっても、最低限の社内ルールを整えておくことはとても大切です。
たとえば、次のようなルールです。
- 勤務時間
- 休日
- 欠勤・遅刻・早退の連絡方法
- 有給休暇の取り方
- 服務規律
- 副業の扱い
- ハラスメント防止
- 退職時の手続き
人数が少ないうちは「その都度話せば大丈夫」と思いがちですが、ルールがない状態では、判断が人によって変わってしまいます。
会社を守るためにも、従業員に安心して働いてもらうためにも、早い段階で基本ルールを整えておくことをおすすめします。
6. 助成金を活用できる可能性も確認する
従業員を雇用するタイミングでは、助成金を活用できる可能性があります。
たとえば、正社員化、研修制度、人材育成、働きやすい職場づくりなどに取り組む場合、国の助成金制度の対象となることがあります。
ただし、助成金は「あとから申請すればよい」というものではありません。多くの場合、取り組みを始める前に計画書の提出や制度整備が必要です。
採用後に「この助成金、使えたかもしれない」と気づいても、タイミングを逃していることがあります。
従業員を雇う前に、活用できる制度がないか確認しておくことで、会社の負担を抑えながら、より良い雇用環境を整えられる可能性があります。
7. 法定4帳簿を準備する
従業員を雇う会社では、労務管理の基本となる帳簿を整え、適切に記録・保存する必要があります。一般に「法定4帳簿」と呼ばれるのは、次の4つです。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿などの労働時間を記録する帳簿
- 年次有給休暇管理簿
氏名や雇入年月日、賃金の計算内容、出退勤時刻、有給休暇の取得状況などを、日々の運用に合わせて正確に記録します。
給与計算ソフトや勤怠システムを利用する場合も、必要な項目が記録され、確認できる状態になっているかを採用前に確認しておきましょう。
8. 36協定の必要性を確認する
法定労働時間を超えて残業をさせる場合や、法定休日に働いてもらう場合には、原則として、事前に労使で36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
「忙しいときだけ少し残業してもらう」「従業員が1人だけだから大丈夫」と考えていても、法定時間外労働や法定休日労働をさせる可能性があれば、準備が必要です。
36協定を届け出ただけで無制限に残業させられるわけではありません。残業時間の上限や割増賃金、従業員の健康管理も含めて、実際の働き方に合った運用を整えましょう。
チェックリスト
- 勤務時間を決めた
- 給与の締め日・支払日を決めた
- 雇用契約書を用意した
- 必要な保険手続きを確認した
- 欠勤連絡や有給休暇など、基本の社内ルールを決めた
- 活用できる助成金がないか確認した
- 法定4帳簿を準備した
- 残業や休日労働の予定を確認し、必要に応じて36協定を準備した
まとめ
従業員を雇う前に整えておきたい基本は、次の8つです。
- 労働条件を明確にする
- 労働条件通知書・雇用契約書を準備する
- 労働保険・社会保険の手続きを確認する
- 勤怠管理と給与計算の流れを決める
- 就業ルールを整える
- 助成金を活用できる可能性を確認する
- 法定4帳簿を準備する
- 36協定の必要性を確認する
人を雇うことは、会社にとって大きな成長のきっかけです。一方で、準備が不十分なまま採用を進めてしまうと、手続き漏れや労務トラブルにつながることもあります。
「初めて人を雇うけれど、何から準備すればよいかわからない」
「雇用契約書や保険手続きに不安がある」
「助成金も含めて、採用前に整えておきたい」
そのような場合は、専門家に相談しながら進めることで、安心して雇用をスタートできます。
社会保険労務士事務所ウィズテラスでは、初めての雇用に向けた労務整備、各種手続き、雇用契約書の作成、法定帳簿や36協定の準備、助成金の活用相談まで、会社の状況に合わせてサポートしています。
従業員を雇う前の準備から、安心してご相談ください。